ウォームギアの少量からの製作対応

弊社では試作単品からのウォームギアの製作に対応いたします。例として樹脂で成形量産前の試作のウォームなどの製作が可能です。

最近ウォーム研削工程を短縮する依頼が増加傾向にあります。 研磨工程を省き切削加工にて、できるだけ精度を出す試みです。 それによるメリットは価格を抑え納期を短縮できることです。 歯型歯筋ピッチ測定をしながらお客様と共に研究開発を行っています。

従来のウォームギア加工工程:切削下切り加工⇒ウォーム研削
開発中のウィームギア加工工程:
切削仕上げ加工のみ

ウォームギア製作事例

ウォームギア製作例1

部品名:平歯車/ウォームギア
材質:C3604
サイズ:Φ5×30L
モジュール:0.5
備考:一体加工

ウォームギア製作例2

部品名:ウォームギア
材質:SUS303
サイズ:Φ8×20L
モジュール:0.
備考:切削1級

ウォームギア製作例3

部品名:平歯車/ウォームギア
材質:SUS304
サイズ:Φ3×50L
モジュール:0.2
備考:一体加工

部品名:テーパーウォームギア
材質:SUS304
サイズ:50L
モジュール:0.5

ウォームギアとは

ウォームギアは、ネジのような螺旋状の歯がついた円筒状の「ウォーム」とはすば歯車(斜歯)の「ウォームホイール」の2つが直角に噛み合ったものを指します。ウォームは、1条のものが一般的ですが、複数の条を持つものもあります。ウォームギアは、2つの回転軸が交わらず平行でない「食い違い軸」の歯車です。ウォームの名前の由来は、芋虫を指す「Worm(ワーム)」からきています。
円筒ウォームギアでは効率が低くなりますが、弊社では効率の良い、鼓形ウォームギアの製作も承っております。
ウォームの軸を中心に回転させる動力を加えると、ネジをしめこむような形でウォームホイールをゆっくりと送り回転させます。ウォーム側からは回転させられますが、ウォームホイール側から回転させようとしてもセルフロック現象が発生し動作しない、少し変わった性質を持つ歯車機構です。この点に関しては後ほど詳しく解説します。

ウォームギア

ウォームとセットのウォームホイールとは

ウォームホイール

ウォームギアの構成要素であるウォームは、ねじのように傾斜した歯を持ち、ウォームホイールと噛み合うことで回転運動を伝えます。一方、ウォームホイールは、一般的に斜歯の円形ギアであり、ウォームの歯に対して滑らかに回転します。ウォームが一回転するごとに、ウォームホイールは少しずつ回転するため、回転速度を減速する効果があります。この組み合わせにより、大きな減速比と高いトルクを得ることが可能です。

ウォームギアの作り方

ウォーム、ウォームホイールの作り方には、大きく分けて3つの加工方法があります。

  • シングルカッター加工
    歯溝と同形状をした「3形」と呼ばれる刃物を使って、歯溝を1つ1つ加工していく方法です。精度は後述のインボリュートホブ加工よりも落ちますが、専用機でなくても加工できるため少量生産の場合において、コストパフォーマンスに優れています。
  • インボリュートホブ加工
    ホブと呼ばれる「3形」の刃が3条以上並んだ刃物を使って、歯車全体の歯溝を少しづつ回転させながら切削していく方法です。歯車全体が均一に仕上がるので歯車の精度が高いのが特徴です。ホブ盤と呼ばれる機械を使って加工します。量産加工時の加工速度が早く、量産加工に向きます。
  • ボールエンドミル加工
    マシニングセンタを使って、ボールエンドミルなどの刃物を使って切削していく方法です。専用の刃物を使用する必要がなく、形状の自由度も高いため、モジュールの異なる歯車であっても同一の刃物で加工ができます。特殊な形状の歯車、歯車の試作品の作成に向いています。

ウォームギアの利点

ウォームギアは、その独自の構造により以下のような利点があります。

  1. 高い減速比の実現
    ウォームギアは、ウォームの条数とウォームホイールの歯数を組み合わせることで、非常に高い減速比を実現できます。減速比が大きくなると、少ない入力回転で大きなトルクを得ることができるため、重負荷の機械や装置に適しています。
  2. セルフロッキング機能
    ウォームギアは逆回転しにくい特性を持ち、セルフロック機能として利用されています。これにより、出力軸であるウォームホイール側に逆方向の動力がかかった場合でも、入力軸のウォームが回転しないため、安全性が確保されます。特に、昇降機やエレベーターの巻き上げ装置で重要な役割を果たしています。
  3. 静音性
    ウォームギアは、歯の接触が滑らかであり、摩擦によって生じる振動や騒音が少ないため、静音性に優れています。これは、精密な機器や静かな動作が必要な環境(医療機器など)での使用に適しています。
  4. 位置精度の向上
    ウォームギアは、バックラッシュが少なく位置精度が高いため、精密な制御が求められる工作機械やロボットアームに利用されます。位置決めの精度が高く、安定した動作が可能です。

ウォームギアの欠点

ウォームギアには、以下のような欠点もあります。

  1. 摩耗の発生
    ウォームギアは大きな摩擦が生じやすく、そのため摩耗が進みやすいという欠点があります。摩耗が進むと、効率が低下し、最終的には交換が必要になります。このため、使用環境に合わせた定期的なメンテナンスが必要です。
  2. エネルギー伝達効率の低さ
    ウォームギアは接触面が滑りやすく、エネルギー伝達の効率が低下することが多いです。このため、動力を無駄なく利用したい場合には、他のギア機構と比較して効率が劣る場合があります。
  3. 熱発生と冷却対策の必要性
    高速回転で使用すると摩擦による熱が発生しやすく、焼き付きのリスクがあります。このため、使用条件に応じた適切な潤滑や冷却方法の採用が必要です。潤滑が不十分な場合、寿命が短くなる恐れがあります。

ねじ歯車との比較

ウォームギアと同じ「食い違い軸」の性質を持つ歯車機構に「ねじ歯車」があげられます。
簡単に違いと使い分けを紹介します。

ウォームギアネジ歯車
トルク
省スペース性×
減速比×
価格

上記のような特徴から、ウォームギアはトルクや減速比を求める用途の際に向きます。省スペース性を重視する場合やコストパフォーマンスを重視する場合はねじ歯車を採用したほうがいいでしょう。

ウォームギアの材質

ウォームギアは、さまざまな材料で製造されており、それぞれ異なる特性を持っています。以下に、主な材料とその特性をまとめます。

  • アルミニウム青銅 (CAC702)
    • 耐摩耗性が高く、軽量であるため、ウォームホイールに適しています。
    • 精度と追加工性のバランスが良い製品です。
  • SUS303 (ステンレス鋼)
    • サビに強く、耐食性が高いため、湿気の多い環境でも使用可能です。
    • 一般的に強度と耐久性が求められる用途に適しています。
  • SCM440 (合金鋼)
    • 高い強度と耐摩耗性を持ち、調質処理によってさらに性能が向上します。
    • 歯面高周波焼入れが施されることが多く、耐久性が増します。
  • S45C (炭素鋼)
    • コストパフォーマンスに優れた材料であり、一般的な用途に広く使用されています。
    • 歯面焼入れ処理を施すことで耐摩耗性が向上します。

これらの材料は、それぞれ異なる特性を持ち、使用する環境や目的によって選択されます。例えば、高トルクや高負荷がかかる場合にはSCM440やS45Cが選ばれることが多く、耐食性が求められる場合にはSUS303が適しています。

ウォームホイールの材質

ウォームホイールの材質には、耐摩耗性や滑らかな動作が求められるため、一般的に次のような材質が使用されます:

  1. アルミ青銅
    アルミニウム青銅は、耐摩耗性が高く、摩擦に強いため、ウォームギアに適した材質です。耐久性に優れており、高トルクが要求される機械でも長期間使用可能です。
  2. 鋳鉄
    鋳鉄もウォームホイールの材質として利用されることが多く、硬度が高く、耐久性に優れています。ただし、摩擦熱が発生しやすいため、冷却や潤滑が必要です。
  3. プラスチック
    軽量で低コストのため、軽負荷のウォームギアで使用されることがあります。プラスチックは耐摩耗性には劣りますが、静音性が求められる用途には適しています。

ウォームギアの減速比について

ウォームギアの減速比は、ウォームの条数とウォームホイールの歯数によって決定されます。一般的には次のように計算されます:

減速比=ウォームホイールの歯数​ウォームの条数

ウォームの条数/ウォームホイールの歯数​

減速比=ウォームホイールの歯数ウォームの条数\text{減速比} = \frac{\text{ウォームホイールの歯数}}{\text{ウォームの条数}}減速比=ウォームの条数ウォームホイールの歯数​

この計算により、減速比を自由に設計することが可能です。減速比が大きいほど出力トルクが増加し、少ない入力回転数で高いトルクを得ることができます。たとえば、ウォームホイールに60の歯があり、ウォームが1条の場合、減速比は60:1となります。減速比が大きくなるほど、効率的な動力変換が実現しますが、摩耗や熱の発生も増えるため、潤滑や冷却が重要になります。

ウォームギアの用途

ウォームギアは、その特性により、さまざまな産業や機械に利用されています。主な用途を以下に挙げます。

  1. エレベーターや昇降機
    ウォームギアのセルフロック機能により、エレベーターが停止中でも位置が固定されるため、安全性が向上します。昇降機では、突然の動力喪失時にも停止した状態を保てることが求められるため、ウォームギアが利用されています。
  2. コンベアシステム
    工場の自動化や物流センターで利用されるコンベアシステムでは、動力の方向を変更するウォームギアが役立ちます。これにより、物品を効率よく搬送し、作業効率を向上させることができます。
  3. 医療機器や精密機械
    静音性が求められる医療機器や精密な動作が必要な機械においても、ウォームギアが利用されます。低騒音で滑らかな動作が求められる環境に適しており、微細な調整が可能です。
  4. 望遠鏡や顕微鏡の調整機構
    望遠鏡や顕微鏡では、微調整が必要なため、ウォームギアの高い減速比と静音性が重宝されます。特に、天体望遠鏡の回転や微動装置に使用され、正確な角度調整が可能です。
  5. 弦楽器のペグ
    弦楽器のチューニングペグにもウォームギアが使用され、微細なチューニングが可能になります。ウォームギアのセルフロック機能により、チューニングの狂いが少なく、安定した音程を維持できます。

ウォームギア設計のポイント

ウォームギアは、特に高い減速比を実現するために広く使用される機械要素です。その設計にはいくつかの重要なポイントがあります。以下に、ウォームギア設計の際に考慮すべき主要な要素をまとめます。

1. 減速比の設定

  • 減速比の計算:
    ウォームギアの減速比は、ウォームホイールの歯数をウォームの条数で割った値で決まります。例えば、ウォームホイールの歯数が50枚、ウォームの条数が1条の場合、減速比は50:1となります。この比率は、必要なトルクと速度を決定するために重要です。
  • 設計の目的:
    高い減速比を実現することで、モーターの回転数を低下させつつ、出力トルクを増加させることができます。これにより、特定のアプリケーションにおいて効率的な動力伝達が可能になります。

2. 材料の選定

  • 一般的な材料:
    ウォームギアには、アルミニウム青銅、鋳鉄、プラスチック(ポリアセタールなど)、青銅、スチールなどが使用されます。材料の選定は、耐摩耗性、耐食性、コスト、強度などに基づいて行われます。
  • 耐久性の考慮:
    特に高負荷や高温環境で使用される場合、耐久性の高い材料を選ぶことが重要です。例えば、鼓形ウォームホイールは、歯の肉厚が厚く、強度が向上するため、耐久性が高いとされています。

3. 潤滑の選定

  • 潤滑の重要性:
    ウォームギアは摩擦が大きいため、適切な潤滑が必要です。潤滑は、摩擦の低下、温度上昇の防止、異物の除去などの目的があります。
  • 潤滑方法の種類:
    • グリース潤滑: 小トルク、低速回転で使用。
    • 油浴式潤滑: 中トルク、中~高速回転で使用。
    • 強制潤滑法: 大トルク、高速回転で使用。

4. 歯形状と設計

  • 歯形状の選定:
    ウォームホイールの歯形状は、製造プロセスや使用条件に応じて選定されます。はすば形や鼓形など、異なる形状があり、それぞれに特性があります。
  • 接触面の考慮:
    歯車の接触面が線接触か面接触かによって、耐摩耗性や耐久性が異なります。鼓形ウォームホイールは面接触となるため、耐久性が向上します。

5. 設計の精度と製造

  • 精度の重要性:
    ウォームギアは高い精度が求められる部品であるため、使用する機器もそれに見合った精密さを持っていることが重要です。数値制御工作機械の精度が設計の成功に直結します。
  • 製造プロセスの選定:
    製造方法(切削、鋳造、鍛造など)も設計に影響を与えるため、適切なプロセスを選定することが重要です。

ウォームギアの製作ならサイトウ工機 仕様設計段階からのご相談にも対応

ウォームギアは、高い減速比、セルフロック機能、静音性などの特徴から、さまざまな産業機械や精密機器に広く活用されています。エネルギー効率や摩耗に関する課題はあるものの、適切なメンテナンスや材質の選定により、高効率かつ安全な運用が可能です。そのため、今後も幅広い分野でウォームギアの利用が進むことが予想されます。